教授からのご挨拶

北海道大学麻酔科のホームページをご覧いただき、誠にありがとうございます。北海道大学麻酔学講座は、昭和35年に初代古川幸道教授によって開講され、その後、剱物修教授、森本裕二教授のもとで発展を遂げ、現在に至っています。2026年度より、私、白水が教室を担当させていただくこととなりました。これまで築かれてきた伝統と実績を大切に受け継ぎながら、新たな時代の麻酔・周術期医学を切り拓いていく責任を感じています。

現在の医療において、麻酔・周術期医学が果たす役割は、かつてないほど大きくなっています。超高齢社会の進展に伴い、重症で複雑な背景を持つ患者さんに対して、安全に高度な医療を提供することが求められています。北海道大学病院は、道内で唯一、心臓移植手術を実施できる施設であり、さまざまな高度先進医療や高難度手術が行われています。そのような医療を支えるうえで、麻酔科医の役割は極めて重要です。私たちは、手術中の麻酔管理だけではなく、術前から術後まで患者さんの全身状態を包括的に把握し、最適な治療を考える「周術期管理」を担っています。また、高難度手術を安全に実施するためには、術後の集中治療も不可欠であり、麻酔科医はその中心的な役割を果たしています。

さらに、麻酔科医の活躍の場は手術室にとどまりません。近年では、手術室以外で行われる侵襲的治療や検査における鎮静など、医療安全の観点からも麻酔科医への期待はますます高まっています。痛みの診療においても、難治性慢性疼痛、術後遷延痛、がん性疼痛、無痛分娩など、患者さんが抱えるさまざまな「痛み」に向き合うことが求められています。

麻酔科が担う領域は広がっていますが、患者さんの生命を守り、苦痛を軽減し、安全に治療を受けていただく使命には変わりはありません。私は、麻酔科学の本質は「侵襲制御医学」にあると考えています。すなわち、生命を脅かす「痛み」「出血」「感染」をはじめとするさまざまな侵襲を的確に捉え、それを制御し、患者さんの生命と機能を守る医学です。安全で質の高い医療を実践するためには、麻酔科だけでなく、外科をはじめとする関連診療科、看護師、薬剤師、臨床工学技士など、多くの医療者との協力が不可欠です。患者さんを中心に、それぞれの専門性を尊重しながら力を合わせることで、より良い医療を実現できると考えています。

一方で、未解決の課題が数多く残されています。私たちは、目の前の患者さんを救うことを第一にしながら、臨床で生じた疑問を研究課題へと発展させ、基礎研究と臨床研究の両面からその本質を解明し、新たな治療法や医療につなげていく。その積み重ねこそが、未来の患者さんを救う力になると信じています。

我々は、北海道大学という環境を生かし、国内だけでなく世界に向けて発信できる教室を目指します。「Evidenceは誰かが作ってくれるものではなく、自分たちで創るもの」という気概を持ち、世界の麻酔・周術期医学をリードする研究にも挑戦していきたいと考えています。そのために、卒前・卒後教育を通じて、広い視野と探究心を持ち、自ら考え、自ら行動できる人材の育成に力を注いでまいります。

北海道大学が、手術を始めとする治療を受けられる患者さんにとって、安心できる場所であり、医療者にとって誇りを持って働ける場所であり、若い医師にとって「ここで挑戦したい」と思える教室であり続けられるよう、皆様とともに歩んでいきたいと思います。

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