教授からのご挨拶

 昨今の外科医療の飛躍的な進歩により、今まで手術ができなかった病気や、全身状態が極めて悪い患者さんの手術も可能になってきました。その手術中、さらに手術の前後、いわゆる周術期の患者さんの命を守っているのは麻酔科医です。よく麻酔科医は「縁の下の力持ち」と言われますが、外科医療の進歩を支えているのは、麻酔科医療の進歩と麻酔科医の献身的努力の結果と言っても過言ではありません。私たち北大麻酔科は、手術室の麻酔のみならず、集中治療や痛みの治療などの幅広い分野で、これを私たちは「侵襲制御医学」と呼んでいますが、まずは患者さんのために、今後も全力を尽くしていきたいと考えております。

 麻酔科医は患者さんと接する機会が少ないと言われます。現に手術を受けた患者さんで、麻酔科医の顔を覚えている人は少ないかもしれません。しかし、手術中、眠っている患者さんの傍をひと時も離れず、「今、痛みはないだろうか」、「心臓や肺などの臓器はきちんと守られているだろうか」等々を絶えず心配しているのも麻酔科医です。一方、そういう日々の臨床を通して、色々な疑問が生じてきます。実際、まだまだ分からない事が数えきれないくらい沢山あります。これらを少しでも明らかにし、麻酔科学、さらには医学の発展のために微力ながら寄与し続けていければと考えております。

 新卒後研修制度以降、医局の立場や役割が大きく変わりました。「医局制度は諸悪の根源」とまで言われてきましたが、果たしてそうでしょうか。一人一人を長期的展望にたって、きちんと教育できるのはやはり医局に勝るものはないと考えています。さらに、医局には沢山の仲間がいます。困った時には彼らが必ず助けてくれます。私たちの教室では、一人一人がそれぞれの目標に向かって邁進できるよう、愛情を持ったテーラーメードの教育を心がけています。その結果、10年、20年後、「この教室で学んで本当に良かった」と一人でも多くの方々に言ってもらえるように、今後も努力しく所存です。

森本 裕二