教室の沿革

当教室は昭和31年6月に発足し、昭和35年に麻酔学講座として独立し、古川幸道が初代教授に就任しました。 昭和60年11月からは、第2代劔物修教授が引き継ぎました。平成11年4月より、講座名を麻酔学講座より侵襲制御医学講座と変更しました。 侵襲制御医学とは麻酔・手術侵襲(臨床麻酔)、疼痛(ペインクリニック・緩和医療)、臓器不全・外傷・敗血症(集中治療・救急・高気圧酸素治療)などの侵襲から 生体を守るための医学を統合した名称であり、当教室の目指す方向が凝縮された名前であると考えております。

平成12年からは大学院大学への改組に伴い高次診断治療学専攻侵襲制御医学講座侵襲制御医学分野(病院麻酔科)と名称が改められ、 当教室出身の丸藤哲前教授が主宰する救急医学分野(病院救急科)とともに、大講座である侵襲制御医学講座を構成しております。 さらに平成15年8月には、劔物教授の一期生である森本裕二が侵襲制御医学分野第3代教授に就任しました。 このように、古川教授が礎を築かれ、劔物教授が発展させた当教室もすでに54年(2014年現在)の歴史を重ね、現在では全国有数の教室に成長しました。またこの間、道内の多くの有力病院と協力関係を築き、相互の人事交流を通じて、臨床、教育、研究等含めた、医学の発展や医療への貢献に努めています。 なお、平成18年1月より、大学での役割分担を明確にするため、侵襲制御医学分野は麻酔・周術期医学分野(現 麻酔・周術期医学教室)に名称変更しました。


臨床麻酔において、北大病院の全身麻酔件数は、全国の旧国立大学病院で常に全国上位を維持しております。また北海道の最後の砦病院の一つとして、以前では手術適応とならなかったような極めて困難で、かつ多彩な麻酔管理を施行し、北海道の医療のために少なからぬ貢献をしていると自負しております。例えば、心臓移植を含め脳死移植では北海道の唯一の受け入れ施設でありますし、最近では超緊急の新生児複雑先天性心奇形の臨時手術も、年々増加しております。これらの麻酔症例に対して、教員・医員・研修医がチームを組み、綿密な麻酔計画のもとに安全で質の高い麻酔を提供しています。

ペインクリニックでは、様々な痛みに対する治療を行っています。神経ブロックや東洋医学、特に漢方を取り入れた内服治療、さらには患者さんに苦痛を与えないレーザー治療などを組み合わせながら、難治性の痛みにも積極的に取り組んでおります。また、平成20年度から、北大病院において緩和医療チームが発足し、麻酔科もその主要メンバーとして活動を行ってきておりましたが、平成28年から、敦賀健吉講師が緩和ケアチームでの実務上トップとなり、その後は麻酔科主導で運営しております。

北大病院集中治療部は、平成元年に開設され、10床で稼働しております。平成30年度からは、森本が部長、斉藤仁志講師が、副部長を務めております。人工心肺使用手術、移植手術をはじめとする大手術後の管理、院内重症患者、救急部経由の救急患者を昼夜の別なく治療しています。 すでに多くの関連教育病院においても、集中治療部を麻酔科主導で運営しております。


多人数収容可能な第2種高気圧酸素治療装置は道内に3台しかありませんが、札幌圏内では北大病院にしかありません。 術後の血行障害や神経障害のみならず、潜函病、一酸化炭素中毒などの救急疾患などにもその威力を発揮しております。幸い、北大やその関連施設では、その効果を広く認識していただき、多くの患者さんを紹介していただいております。また平成17年2月から、自費診療としてスポーツ外傷への応用も試みています。


さらに、道内の多くの有力病院において、当教室出身者ならびに現役教室員が昼夜の区別なく頑張っております。平成25年度から天使病院(藤井ひとみ)と札幌徳洲会病院(奥山淳)といった総合病院の院長に、当教室出身者が昇進いたしました。その他、副院長等の要職で頑張っているものも多数います。これらは、私たちの、侵襲制御医学に対する真摯な取り組みが評価された結果と考えております。

これら関連教育病院の協力のもと、今まで多くの優秀な麻酔科医を輩出してきました。最近の専門医試験の合格率も、ほぼ100%に近く、全国平均をはるかに超えています。さらに、平成29年度から始まった専門医機構の専門医研修では、これら20程度の有力病院と一緒に、「北海道大学麻酔科専門研修プログラム」を構築しています。詳細は「専門医研修について」に記載しておりますが、いわゆる侵襲制御のコンセプトに合致した優秀な麻酔科医の育成により一層努めていきます。

研究についても、その詳細は「研究について」に記載しておりますが、基礎・臨床両面から、教室一丸となって麻酔科学の発展に努めています。過去のman power不足からも少しずつ脱却し、最近では順調に研究成果も増えてきております。

以上、大学では兄弟教室である救急医学教室との協力関係を、また関連協力病院とも連携をより一層強固にし、今後も臨床、教育、研究すべての面で侵襲制御のコンセプトを発展させ、これら分野でのリーディングかつモデルとなる教室を目指しております。

歴代教授

初代 古川 幸道(逝去)  在任期間 昭和35年~昭和60年3月
2代 劔物  修(逝去)  在任期間 昭和60年~平成15年3月
3代 森本 裕二      平成15年8月~現